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一片氷心で四季を巡る書斎ブログ

『レインツリーの国』有川浩/忘れられない1冊の本から広がる世界と恋愛

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近年、図書館戦争シリーズで話題の有川浩。

読もう読もうと思っていたのですが、古本屋に行くたびに他の小説を買ってしまい、積ん読消化に明け暮れていましたが、ブログのコメント欄で教えていただいた本書、『レインツリー国』を読みました。

純文学小説や、大衆小説、ジャンルは問わず様々な小説を読みましたが、本書は色んな意味で新鮮であり、新しい小説でした。

きっかけは「忘れられない本」。そこから始まったメールの交換。共通の趣味を持つ二人が接近するのに、それほど時間はかからなかった。まして、ネット内時間は流れが速い。僕は、あっという間に、どうしても彼女に会いたいと思うようになっていた。だが、彼女はどうしても会えないと言う。かたくなに会うのを拒む彼女には、そう主張せざるを得ない、ある理由があった――。

ライトノベルやメール、チャット、ブログが存在する小説

10年以上前に読んだ、忘れられないライトノベルの感想が書かれたブログから繋がる世界。

SF作品を除いて、アニメや映画などでは、ケータイ、スマホを登場人物が普通に所持していることが、さも当然かのように受け止めてしまいますが、小説は電話という個人につながるチャネルが排除(意識的なものかは謎)されているケースが非常に多いと思います。

私がよく読む小説の趣向の問題が多々あると思いますが、インターネットが存在する物語、特にチャットやブログなど一般のインターネット利用者より、少し踏み込んだサービスに違和感なく言及している設定が印象的でした。(最近は珍しくないのでしょうか・・・?)

ただの恋愛小説ではない

図書館戦争シリーズで有名な、という著者への過度な期待を持っていた事もありますが、数ページを読んだ時点では、正直、私には合わないかな、と思いました。

というのは、本書のページの大半は、メールのやりとりや、チャットの会話内容(しかも関西弁)などが占めており、始めは、いわゆるケータイ小説を読んだような感覚だったためです。

しかし、読み進めるうちに、意外と奥が深いことに気付かされます。

主人公の男が関西弁のおかげか、うまい具合に軽く読み進めることもできますが、健常者とそうではない人の違い(違いの程度)、それぞれの葛藤など、著者がその筋にかなり精通している(もしくは、かなり勉強をした)ことが伺えます。

本書ではそういった、生まれた時から、もしくは後天的に、社会的に弱い立場に置かれている人の事を、物語を通して知ることができます。

素直な物語に好感が持てる

少々小難しい解釈をしていますが、物語はとても素直なハッピー・エンドです。

そして何より、恋愛小説というものを、私は長らく読んでいませんでしたので、ストレートな物語というものが新鮮で、心が若返った様な気持ちです。(まだそこまで歳ではない、と思いたいのですが。)

たまには恋愛小説も選んで読むようにしようにしようかなと思います。

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