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一片氷心で四季を巡る書斎ブログ

『旅猫リポート』有川浩/人と猫の関係を超えた絆の旅

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旅をしました。

先日、福島県へ仕事の都合で出張をしたついでに2泊3日(出張も含めると3泊4日)の旅です。

予定の1つとして磐梯熱海の温泉宿にゆっくり泊まって、久しぶりに好きなだけ小説でも読もうかと計画をしていたのですが、うっかり持っていく予定だった小説を忘れてきてしまったため、郡山駅で購入した小説が本作品です。

旅路の途中ということで、どこか旅をテーマにした物語を求めているところがあったのかもしれません。

2泊3日の福島旅行、実際に旅をしながら読んだ旅小説をここに紹介します。

野良猫のナナは、瀕死の自分を助けてくれたサトルと暮らし始めた。それから五年が経ち、ある事情からサトルはナナを手離すことに。『僕の猫をもらってくれませんか?』一人と一匹は銀色のワゴンで“最後の旅”に出る。懐かしい人々や美しい風景に出会ううちに明かされる、サトルの秘密とは。永遠の絆を描くロードノベル。

無類の猫好きが何故、愛猫を手放さなければならないのか

本作品は、ひょんな事から出会った野良猫・ナナを家猫として飼い始めた無類の猫好きである主人公・サトルが、やんごとない事情から愛猫・ナナの引き取り主を探すための旅をする、ということが序盤のあらすじになっています。

まだ若く、働き盛りであるはずのサトルが何故、かつてのたった一人の家族であった愛猫・ハチの生き写しでもあるナナを手放さなければならないのか?

やがて読み進めるうちに明かされていく、サトルの秘密。

正直なところ、物語の展開は途中から何となく読めていたのですが、それでも物語の進行から目を離す事ができませんでした。

人間目線と猫目線とが交差する

本作品は、物語の主人公であるサトルとその周辺の友人たちを中心とした人間目線と、愛猫・ナナと旅先で出会う動物たちの目線と、過去と現在が交差しながら語られるの進行が特徴的です。

猫の言葉は人間には分からないけれど、猫には人間の言葉が分かり、時に会話が成立しているかのようにコミュニケーションが取れたり、時にディスコミュニケーション(不成立)だったりと、SF的な要素は排除されつつ、どこか現代風の童話を読んでいるようです。

なかなか高飛車な話し方だけれど、全く憎めない、むしろ可愛いナナのしゃべり口調にも、のほほんとさせられます。

【総合的な感想】猫と人間の絆に泣いた

歳を重ねるごとに、涙腺が脆くなってきてるらしく、何度も泣かされました。

何となく展開は読めていたのに、分かっていたのに、それでも何度も泣いてしまいました。

近頃、本といえば自己啓発に類する本をよく読むようになっていたのですが、やはり小説で活字を通して物語を味わうという感覚は特別な体験です。

でも、いつか夏に繋がるはずって扉を開け続けた猫も外国にはいるそうだしね。(277ページ)

サラリと、有名な猫SF『夏への扉』へ触れられているのも、小説好きにはニヤリとしてしまうポイントです。

ところで本作品には絵本もあるのですが、購入しようか現在進行形で迷っています。

私は独身ですので、字が読めない子供に読み聞かせるような機会は無いのですが、絵本ではこの物語の良さをどう表現しているのだろうかと、純粋に気になります。

本作品を絵本と比較するのであれば、生と死を見つめるという観点では超有名な絵本である『100万回生きたねこ』に近いかもしれません。

何はともあれ、猫好き・動物好きな人には文句なしにおすすめの小説です。私のように、旅路の途中に読むのも旅情のスパイスになって良いものです。

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