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『ビブリア古書堂の事件手帖(4)〜栞子さんと二つの顔〜』三上延

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今、夢中になっている『ビブリア古書堂シリーズ』。あっという間に第4 巻です。

古書に主軸を置いて回る世界観。本が好きな人ならば、読んでいてとても満たされた気持ちになると思います。

今回もあっという間に通読していまいました。

珍しい古書に関係する、特別な相談―謎めいた依頼に、ビブリア古書堂の二人は鎌倉の雪ノ下へ向かう。その家には驚くべきものが待っていた。稀代の探偵、推理小説作家江戸川乱歩の膨大なコレクション。それを譲る代わりに、ある人物が残した精巧な金庫を開けてほしいと持ち主は言う。金庫の謎には乱歩作品を取り巻く人々の数奇な人生が絡んでいた。そして、深まる謎はあの人物までも引き寄せる。美しき女店主とその母、謎解きは二人の知恵比べの様相を呈してくるのだが―。

【プロローグ】

篠川姉妹が彼女たちの従姉の結婚式のため、外出中のため店番を行う五浦大輔。

アルバイト店員の五浦大輔は、ビブリア古書堂に鳴り響く電話を受ける。

栞子さんからの電話かと思いきや、その電話の主は栞子さんの母、篠川智恵子からだった。

【第一章】『孤島の鬼』

かつての篠川智恵子、現在の篠川栞子が見せる、古書に関する事件を次々に解決していく噂を聞きつけ、ビブリア古書堂に奇妙な依頼がまたひとつ。

膨大な江戸川乱歩のコレクションを、全てビブリア古書堂に売るかわりに、金庫を開けて欲しい。

「鍵」と「ダイヤル」と「暗証文字」の三重ロック式の「旧日本軍の特注品」の金庫には、開錠のスペシャリストも匙を投げてしまった。金庫の中のことを思うと、取り壊して開けることもできない。依頼主の手元にあるのは「ダイヤル」の書かれたメモだけで、依頼主の願い叶えるには「鍵」と「暗証文字」を探さなければならない。

記憶に新しい東北大震災の影響で、店舗兼住宅のビブリア古書堂は耐震工事のお金が必要。膨大なコレクションは大きな利益を生む、店としても、住宅事情としても、またとない依頼だった。

しかし、依頼主 来城慶子が膨大な江戸川乱歩の本をコレクションできたのには、秘密があった。そして、価値ある古書を手放してまで手に入れたい、金庫の中身とは。

【第二章】『少年探偵団』

膨大な江戸川乱歩コレクションは、資産家 鹿山明の別荘と古書の管理人、そして愛人として来城慶子が相続したものであった。

愛人という立場上、鹿山家からは疎まれる慶子は、一度は無いと言い捨てられた金庫の鍵を、再び鹿山家で探して欲しいとビブリア古書堂の一同に依頼をする。

訪れた鹿山家で聞いた生前の鹿山明と、来城慶子にとっての生前の鹿山明の人柄は、それぞれ真逆のもので、さながら『怪人二十面相』のよう。

難航する探索の中、篠川親娘を一方的に目の敵にする「ヒトリ書房」の井上から、鹿山家と「ビブリア古書堂」そして「ヒトリ書房」が実は密接に関わっていることが、明かされ、井上からも依頼を解決して欲しいと持ちかけられる。栞子さんの母 智恵子とは違い、どこかズレて変に人間味のある娘の姿を見て、井上は栞子さんと和解する。

井上の協力もあり、意外な場所から金庫の「鍵」を見つけ、急いで依頼主の元に訪れると、そこには栞子さんの母、篠川智恵子の姿が。

【第三章】『押絵と旅する男』

思わぬ母の登場に面食らう一同だったが、ミステリアスに姿を晦ますことなく、あろうことかビブリア古書堂まで同乗することになる。

栞子さんを優に超える古書の知識を用いて、依頼主のテストを考察し、次の鍵である「暗証文字」のヒントと、娘への挑戦示唆する智恵子。

母親嫌いの栞子さんに、次の鍵への焦りが生まれるが、急遽再び訪れた鹿山家で新たなキーアイテムを発見し、すぐに解読できる事を断言する。

しかし、栞子さんの推理は外れてしまい、大輔にアドバイスを求める。古書の知識はからっきしの大輔だが、ポツリと呟いたアイテムの特徴をキッカケに、栞子さんはついに最後の「暗証文字」を解読する。

そして、金庫が開く。金庫の中身は、依頼主にとって特別なものだった。

それでも金庫の中身に執着する篠川智恵子。親娘で旅立ってしまった依頼主を追いかける提案をする智恵子と揺らぐ栞子さん。

母より大輔との約束を優先してくれた大輔は、栞子さんとの距離を急速に縮める。

【エピローグ】

篠川智恵子が家族を置いでまで、出ていかなければならなかった理由が、志田の口から大輔に語られる。

智恵子から栞子さんへの誘いを引き止めてしまった大輔は、自分のやったことが本当に正しかったのか、悩み始める。

総合的な感想

これまで、一話ごとに古書にまつわる奇妙な相談を受けては解決する、というパターンでしたが、4巻は初の長編作品でした。

誰もがその名を知る、ミステリの巨匠 江戸川乱歩。私の家にも何作品かハードカバーの『少年探偵団』シリーズが有り、少年ケニアに続き、子供の頃に何冊か読んでいたことを思い出しました。

膨大な参考文献から、捻り出された物語の栞子さんから発せられる江戸川乱歩に関する薀蓄には、作家 三上延の並々ならぬ調査が感じられ、古書に関しては門外漢ながらも、非常に勉強になる1冊でした。

”あとがき”に三上延より、「そろそろ物語も後半」とのコメントがあり、いつまでも続いて欲しい『ビブリア古書堂シリーズ』にもいつか終幕が訪れる事には、やはりかつて夢中になって読んだ『ハリーポッターシリーズ』の後半に感じた寂しさがあります。

篠川親娘と栞子さんと大輔の関係と、とにかく今一番目が離せないシリーズです。

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