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一片氷心で四季を巡る書斎ブログ

『スキュラ&カリュブディス 死の口吻』相沢沙呼/背徳の新伝奇ミステリ

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Amazonでとある本を探していたとき、あなたにおすすめの書籍として表示された本書。

まるで少女マンガのような美しい表紙と、どこか惹かれる不思議なタイトル。

今年は、なるべく新しい作者の本を開拓しようと思っていたので、怖いもの見たさで購入してみました。

初夏。街では連続変死事件が起きていた。まるで狼に喰い千切られたような遺体。流通する麻薬。恍惚の表情で死んでいく少女たち。自らも死を求める高校生・此花ねむりは鈴原楓との出会いをきっかけに事件を調べ始める。だが、そこには3年前の殺人事件に繋がる驚愕の真実が隠されていた―。性と死、その果てに垣間見える少女の戦い。逸脱者たちが繰り広げる戦慄の新伝奇譚。

和洋折衷なハーフの美少女、此花ねむり

表紙に描かれるミステリアスな美少女にして本作品の主人公、此花ねむり。

何物も寄せ付けないクールな振る舞いと肉を食べないこだわりには、それなりの理由があった。

ありふれた普通の明るい女子高生、鈴原楓はひょんなことから此花ねむりに”拾われ”、一方的に友情を深めていく。

鈴原楓は、和洋折衷な美少女 此花ねむりの本当の秘密に気付くことができるのか。

少女の間にだけ流通するクスリ、プーキー

なぜか、少女の間でだけ流通する謎のクスリ、プーキー。

しかし、ブローカーから直接手に入れる以外の入手方法は無く、その成分も人間には全く無害なもの。横流しをした少女には厳しい罰が与えられるという。

なぜ少女たちは化学的に無害なクスリを求めるのか、なぜ横流しすることができないのか。誰が、麻薬を製造しているのか。

禁忌を犯した少女に訪れる猟奇的な事件

プーキーに手を染めていた少女たちが次々と失踪する。

そして、目を背けたくなるような変わり果てた姿で発見される。その姿はまるで狼に襲われ、四肢を食いちぎられたかのように猟奇的。まるで3年前に起きた凄惨な未解決の猟奇殺人事件と酷似した現場。

鈴原楓の通う高校からも、次々に被害者が。

しかし、此花ねむりは死を呼ぶクスリ、プーキーを求めることを止めない。

総合的な感想

恋あり、百合あり、友情あり。性あり、ホラーあり、グロテスクあり。

小さい頃に読んだ、少女向けホラーマンガのような作品でした。(ちなみに、女性作家のような名前ですが、相沢沙呼は男性作家です。)

この作品の評価は、読み手によって真っ二つに分かれると思います。

10代の頃に乙一の黒い作品を読み耽っていたので、グロテスクな表現には好奇心とかなり耐性がありますが、ホラーが苦手な人は避けたほうが無難かもしれません。性と凄惨な表現が数多く含まれています。

私はこういう世界観は好きですが、2020年以降の日本を舞台としているようで、若干SF的な要素があったり、ファンタジー的であったり、要素を詰め込み過ぎている気がします。そしてそれが、うまくまとまっているかというと、ちょっと微妙です。

特に、女探偵 雪紫(すすぎ・ゆかり)の周辺が顕著で、本作品の位置付けは他作品の続編であるかのような雰囲気があったので、少しばかり調べてみたのですが、Wikipediaを見る限り、明確な前作は無いようです。(コアな相沢沙呼ファンなら何か分かるのでしょうか)そういう意味でも、ちょっと物足りなさを感じます。

独特な世界観なので、ハマる人はハマると思います。相沢紗呼は、他作品もタイトルが秀逸ですので、見つけ次第読んでみようと思っています。

私よりは年上ですが、まだ若い作家さんなので、これからの作品に期待を込めて。

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カバーのイラストを手がけた清原紘による、設定画集なるものもあるようです。ちょっぴり欲しい。

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