前作の4巻から5巻(本作品)に至るまで、しばらく他の本を読み間を置きました。
一気に読みたい気持ちも山々なのですが、膨大な積ん読本から、その日の気分でその日に読む本を選んでいるのですが、やっとビブリア古書堂シリーズを手に取る日が来ました。
静かにあたためてきた想い。無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。彼女の答えは―今はただ待ってほしい、だった。ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。謎めいたいわくに秘められていたのは、過去と今、人と人、思わぬ繋がり。脆いようで強固な人の想いに触れ、何かが変わる気がした。だが、それを試すかのように、彼女の母が現れる。邂逅は必然―彼女は母を待っていたのか?すべての答えの出る時が迫っていた。
【プロローグ】リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』(新潮文庫)
4巻のラストで、ついに想いの丈を栞子さんに告げた大輔。
栞子さんの答えは・・・5月中には答えを出す、というものだった。
【第一話】『彷書月刊』(弘隆社・彷徨舎)
どこかよそよそしい、二人の関係。それでも日常は過ぎてゆく。
古書の雑誌、『彷書月刊』(現在は休刊中)。
大輔は、ビブリア古書堂周辺の古書店に、『彷書月刊』をまとめて売っては数日後に買い戻す、そんな奇妙な客がいるという噂を、同業者・滝野ブックスの滝野連杖から耳にする。
告白の返事を待ち続ける、そわそわとした日常に気まずさを感じていた大輔は、現状打破のため早速、栞子さんへ噂話を伝えるも、時を置かずして、噂がビブリア古書堂で現実のものとなる。
なぜ売っては買い戻す、そんな不毛な繰り返しを行っているのか。売主の目的は…。
【断章Ⅰ】小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)
『彷書月刊』の売主の奇行を見抜いた栞子さん。
売主が探していたのは、誰もが知るあの人物だった。ここに来て、あの人の過去がやっと明かされる。
【第二話】手塚治虫『ブラック・ジャック』(秋田書店)
滝野ブックスの滝野連杖の妹にして、栞子さんの親友・滝野リュウ。
栞子さんとは正反対の性格の滝野リュウから、ビブリア古書堂に、古本を通して舞い込む依頼がまた1つ。
滝野リュウの後輩、栞子さんの卒業した大学に通う大学二年生、真壁菜名子からの依頼は、父が出張に出ている間に、父が大切にしている漫画『ブラック・ジャック』の同じ巻が2冊が無くなったので、父が戻るまでに取り戻して欲しい、というものだった。
ところが、真壁菜名子には犯人に心当たりがある様子で、表沙汰にはしたくない様子。
なぜ同じ巻だけ持ち出されたのか、なぜ表沙汰にしたくないのか。『ブラック・ジャック』にまつわる、不思議で複雑な家族のエピソード。
【断章Ⅱ】小沼丹『黒いハンカチ』(創元推理文庫)
これまで散々忌み嫌ってきた母。
しかし、栞子さんは母・智恵子と今現在、繋がりのある周辺の人物に自ら次々と接触し、母を追い求める。
前巻で再会し、母が伸ばした手を取らなかった栞子さんが、今になって母を追い求める理由は…。
【第三話】寺山修司『われに五月を』(作品社)
些細な古書の通信販売のミスから、クレーム処理のため残業になった大輔のいるビブリア古書堂に1本の電話が入る。
またクレームかと、胸騒ぎのする悪い予感は違う意味で的中してしまう。
1巻で、1冊の太宰治の『晩年』を巡り、栞子さんに大怪我を負わせた張本人・田中俊雄が保釈申請を出したらしい。
当然、栞子さんへの接触は禁じられているし、栞子さんの『晩年』は、田中俊雄の中では失われた事になっている。しかし、真実を知る大輔にはどこか引っかかりを感じる。
何はともあれ、残業の時は悪いことばかりでなく、篠川家で食事を共にするというご褒美もあり、この日も大輔は栞子さんの妹・文香の奮う食事をいただくことになった。
しかし、そこには先客が。
とある過去の経緯から、ビブリア古書堂に出入りを禁止された人物、門野澄夫。
無茶苦茶な屁理屈から、母屋に上がり込んでいる様子を目にした栞子さんは不快感を露わにするが、門野澄夫の口から出たのは、やはり古書に関する依頼であった。
これを、栞子さんの母・智恵子が娘と再会するための条件として出された「問題」として認識した栞子さんは依頼を受ける事にする。
【断章Ⅲ】木津豊太郎『詩集 普通の鶏』(書肆季節社)
門野澄夫の依頼を、解決した栞子さんのもとに母・智恵子が現れる。
交わされる母娘の会話。栞子さんが大輔に答えを出せずにいる理由が明かされる。
【エピローグ】リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』(新潮文庫)
ついに大輔の告白に答えを出した栞子さん。
栞子さんの悩みは、大輔にはとても単純なもので、悩み続けた栞子さんにあっさりと解決策を話す。
…やっと想いが繋がった。…しかしそれも束の間、つい最近大輔が感じた悪い予感が突然に現実のものとなる。
【総合的な感想】続きが読みたい、まだ終わってほしくない
毎巻読み終わる毎に、続きがとっても気になる、ビブリア古書堂シリーズ。
あえてシリーズ一気読みをせず、ゆっくり気が向いた時に次の作品を手に取るようにしているのですが、やはり読み始めると、読了まであっという間です。
物語も終盤ということで、物語自体が徐々にスピードを増している事が読んでいて分かります。また、代表的な日本文学の大文豪の作品だけではなく、時に絵本や漫画までもタイトルに冠して、栞子さんの口から語られる古書の知識は物語を楽しむと同時に勉強にもなります。
ライトノベルだからと、色眼鏡で見るべきではなく、本が好きな人なら純粋に楽しめます。
続きが読みたい…けれども、まだ終わってほしくない、そんなシリーズです。