以前よりずっと気になり、読もう読もうと、ずっと思っていた本作品ですが、ついに読み始める事ができました。
なかなか古本屋さんに行っても見かけないので、何でかなと思っていたら、何てことはない、ただライトノベルのコーナーに置かれていただけでした。(見つけるまでに、実に多くの時間を浪費してしまいました。)
何をもってライトノベルと呼ぶのか、本書には挿絵らしい挿絵も少ないので、イマイチよく分かりませんが、何はともあれずいぶん久しぶりに読むライトノベルです。
鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。
【第一話】夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)
主人公にしてメインヒロイン「篠川栞子」と、本の読めない青年、プー輔こと「五浦大輔」の出会いの章。
祖母から、決して触れられることを許されなかった本に触れてしまい、ひどく叱られたことをきっかけに、かつて本を読むことが好きだった大輔は、本が好きなのに読めなくなってしまう。
祖母が亡くなり、好きに処分して良いとの遺言に従い、かつて祖母が古本として購入した古書の値段査定に訪れる。
明かされる祖母の過去と、大輔の出生の秘密。
【第二話】小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)
常連にして、プロのせどり屋、ホームレスの志田がビブリア古書堂へ査定に持ち込む本は、市場価値のある本ばかり。
そんなあるとき、志田はエマージェンシーな事態に見舞われ、その際、志田がとても大切にしていた文庫本、小山清の『落ち穂拾ひ・聖アンデルセン』が少女に盗まれる。
志田の所有物には、他にも価値のある本はあったはず。なぜ、それほど市場価値のない、志田が大切にしていた本だけが盗まれたのか。
志田の証言を元に、志田の商売仲間、男爵こと笠井菊哉、五浦大輔、そして入院している栞子さんと共に事件を解決していく。
【第三話】ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)
どこか銀行員のような風格の男、坂口昌司が査定に持ち込んだ本。査定価格は、わずか500円。
なぜ、この1冊だけが売りに出されたのか。何故手放さなければならないのか。
坂口が、とても大切にしていた本を査定に出された事を知った坂口昌司の妻、しのぶは夫婦の甘いのろけ話を披露しながら、買取を食い止めるために、栞子さんが入院する病院へ訪れる。
隠された坂口の暗い過去と暗くなる現在、そして困難を乗り越える夫婦の愛を発見する話し。
【第四話】太宰治『晩年』(砂子屋書房)
明かされる、栞子さんの怪我と入院の原因。
市場価格400万円は下らない、栞子さんが先代より受け継いだ1冊の古書をめぐる闘争。
目的の本を手に入れるためならば、手段を選ばない謎の男、大庭葉藏とは。
ビブリア古書堂と栞子さんの元に魔の手が忍び寄る。
ここまでの話とは異なり、サスペンス風の雰因気の漂う話し。
総合的な感想
近ごろ長編小説や、少々私には難しいテーマの本ばかりを好んで読んでいたので、第一印象は読みやすい、でした。
それは、内容が薄いからというわけではなく、短いながらも物足りなさを感じさせない各章は、分量と内容の濃さが絶妙に調整されていると言って良いと思います。
また、物語の登場人物のそれぞれが、特定の本に特別な想いを持っていて、その内容が物語に密接に絡み合っている点が非常に魅力的です。
本作品の中でさらりと引用される作品たちは、恥ずかしながら読んだ事のない作品も多いので、そういった新しい本への好奇心が花開く機会にも繋がるかと。
テレビは全く見ない(持っていない)ので、剛力彩芽主演で実写ドラマ化されたり、何かと話題になった当時はほとんど関心がありませんでしたが、なるほど、話題になったのも頷けます。そして、剛力彩芽が栞子さん役というのは、認め難いものです。
まだ1巻しか読めていませんが、完結していないシリーズですし、これからが楽しみでもあります。(すでに4巻まで買ってしまったので、順次読んでいくつもりです。)