アイスハート

一片氷心で四季を巡る書斎ブログ

『陽だまりの彼女』越谷オサム/夢のような甘い生活と暖かい涙

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恋愛小説は好んで読む方ではないのですが、表紙のラフスケッチのような少女が、本屋でとにかく目についたので買ってしまいました。

女性が男性に読んで欲しい本ナンバーワン、とかそんな帯がかかっていたと思うのですが、いざ読み終わってみると、そういう煽り文句も頷けるものでした。

普段は積極的にあらすじを交えて書評を書いているのですが、今回はなるべく、読書感想文に留めたいと思います。

幼馴染みと十年ぶりに再会した僕。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、僕には計り知れない過去を抱えているようで──その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる! 誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさも、すべてつまった完全無欠の恋愛小説。

幼なじみとの再会

社会人になった奥田浩介が、かつて学年有数のバカであった渡来真緒と仕事を通じて再開する。

かつての、その天才的なバカさは微塵も残っていないもの、飽き性で自由奔放な性格はそのままの、懐かしい真緒とたちまち恋に落ちていく。

ジェットコースターの様なスピードで加速していき、次から次へと幸せになっていく二人の姿には、ある種の嫉妬の様なものは微塵も感じず、とにかく読んでいて幸せな気分になります。

陽だまりの中にいるような暖かい涙

私が生まれて初めて心動かされ、感動して泣いてしまったのは、小学校の頃にテレビで見た『忠犬ハチ公』のラスト・シーンでした。以来、コップから水が溢れるように、様々な作品を読んでは、異なる種類の涙を流してきました。

そんなわけで私は人より涙もろい性格なのですが、本作品では恥ずかしながら2回も泣いてしまいました。

一度目は、とろける様な甘くて幸せ過ぎる二人の生活に、二度目は、クライマックスの近い300ページ目以降の展開に。

優しく、心が動かされ、こういう暖かい涙を流したのは、随分久しぶりの事でした。まるで陽だまりの中に居るような気持ちよさです。

ビーチ・ボーイズ『素敵じゃないか』

本書を読み終わって、まず最初にやったことが音楽を聴くことでした。曲は、ビーチ・ボーイズの『素敵じゃないか』。

『素敵じゃないか』は、作品の中で、真緒の機嫌が良い時に口ずさむ曲で、あまり音楽に明るくない私でも、おそらくテレビのBGM等で聴いたことがある曲でした。(ビーチ・ボーイズ自体が世界的に超有名なアーティストなので、ある意味当たり前かもしれませんが)

後半はハッピー・エンドなのか、そうでないのか、読み手によって意見が別れそうな展開でしたが、どちらの結末を選択しても『素敵じゃないか』は、本書にピッタリのテーマ・ソングです。

甘酸っぱい青春と感動がいっぱい詰まった、素敵な小説でした。

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