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一片氷心で四季を巡る書斎ブログ

『ビブリア古書堂の事件手帖(3)〜栞子さんと消えない絆〜』三上延

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続きが気になり、次の本を読む事が楽しみになる作品です。こういう気分は、高校生時代に夢中になって読んだ、J・K・ローリングの『ハリーポッターシリーズ』以来かもしれません。

1巻、2巻に続いて、3巻を読みました。好きなものは後にとっておく性格なので、一気読みしないように、敢えて間に他の小説を読むようにしています。

鎌倉の片隅にあるビブリア古書堂は、その佇まいに似合わず様々な客が訪れる。すっかり常連の賑やかなあの人や、困惑するような珍客も。人々は懐かしい本に想いを込める。それらは予期せぬ人と人の絆を表出させることも。美しき女店主は頁をめくるように、古書に秘められたその「言葉」を読みとっていく。彼女と無骨な青年店員が、その妙なる絆を目の当たりにしたとき思うのは?絆はとても近いところにもあるのかもしれない―。これは“古書と絆”の物語。

【プロローグ】『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)・1

五浦大輔の役割だった、エピローグを語るのは、篠川栞子の妹、篠川文香。

文香は、栞子さんにも、大輔にも秘密にしている事がある。

その秘密とは・・・エピローグへ続く。

【第一話】ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』(集英社文庫)

商品を仕入れて、それを売る。商売の基本の”キ”。

ビブリア古書堂に訪れたお客さんから、在庫のラインナップが良くない事を指摘され、大輔は会員制の古本交換市場へ行くことになる。そこで出会うのは、篠川親娘を敵視する「ヒトリ書房」の店主、井上。

目ぼしい本に入札するも、惜しくも僅差で「ヒトリ書房」に落札されてしまう。

肩を落としながら日常に戻るのも束の間、栞子さんは「ヒトリ書房」の井上から、落札本の窃盗犯として疑われてしまう。

【第二話】『タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいの』

1巻の第3話『論理学入門』以来、ビブリア古書堂の常連客となった坂口しのぶ。

大輔はしのぶから、彼女が子どもの頃に読んだ本を探して欲しいと依頼される。情報は「タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいの」というとても抽象的な情報だけ。

人並外れた古書の知識を持つ栞子さんも、今回はどういう訳か該当する本を言い当てる事ができない。

なぜ栞子さんは本を言い当てられないのか、なぜ本を読まない しのぶ は、本を探そうとしているのか、不器用な親子と、不器用な夫婦の物語。

【第三話】宮澤賢治『春と修羅』(關根書店)

ビブリア古書堂の店主は、古書にまつわることなら、たちまち解決してしまう。そんな噂から奇妙な依頼がまた一つ。

栞子さんの母、かつて智恵子の友人だった玉岡聡子から、かつて彼女の父がビブリア古書堂で買った宮澤賢治の『春と修羅』2冊のうち、1冊が盗まれたので本を取り返して欲しい、という相談を受ける。

盗まれたのは、2冊のうち状態の悪い1冊。なぜ、状態の悪い方が盗まれたのか。聡子は、故人である聡子の父の相続を巡って、兄夫婦とトラブルと確執を抱えていたため、犯人はすぐに見つかると思ったが・・・。

【エピローグ】『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)・2

プロローグの続き。

家を飛び出した栞子さんの母、智恵子からのメッセージを求めて探し続けていた『クラクラ日記』の所在が判明する。その意外な場所とは。

そして栞子さんの妹、文香にとっての響かぬ井戸とは。

総合的な感想

これまでもそうであったように、読み始めたその日のうちに読了してしまいました。

これまでとは少し異なるプロローグとエピローグなど、3巻では、栞子さんのタブーである篠川智恵子への距離が、一歩が明らかに前進していることを感じます。

私にとっては、これまでとは一風変わった本にまつわる第2話が印象的で、坂口しのぶという馴染みの登場人物の前進と、タヌキと呼ばれた正体が私も大好きなキャラクターだった事には驚きを隠せませんでした。

また、栞子さんと大輔の仕事仲間以上の関係も気になるところです。本当に目が離せません。

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