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一片氷心で四季を巡る書斎ブログ

『告白』湊かなえ/母なる狂気と深い闇の結末

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湊かなえの作品は本屋さんで平積みされているのが目立ち、前々から1冊読みたいとずっと思っていました。

作風が分からなかっただけに、最初の1冊はどうやって選ぼうか迷っていたのですが、古書店でたまたま見かけた本書を読むことにしました。

評価が真っ二つに分かれそうな作品です。しかし、はじめての湊かなえにして、本作品がデビュー作とは…。

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」
我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラー

母なる狂気のはじまり

中学生を担任する、とあるシングルマザーの女性教員が学校を去ることになる。

原因は最愛の娘の事故死。

いつもと変わらない空気の流れるなか、ひとりの女性教師が淡々と学校生活を振り返りながら、様々な出来事をひとつひとつ確認するように口にしていく。

教師としての役割。世間を騒がせた未成年の起こした犯罪への所感。世間を感動の渦に巻き込んだ、世直し先生の正体と過去、その関係。牛乳習慣の背景と、その効果。

そして、娘がこのクラスの生徒に殺された、という驚愕の告白。

法で人として平等に裁けない、未成年者による犯罪への、世にも恐ろしい断罪がはじまる…。

一人称でひた語られる不気味さ

本作品の特徴として、ひたすらその章の主役が淡々と物語を語る、記述にあります。

  • 第一章『聖職者』では、女性教師目線
  • 第二章『殉教者』では、事件に関与していない女子教師の教え子目線
  • 第三章『慈愛者』では、事件に関与した少年Bの母目線
  • 第四章『求道者』では、事件に関与した少年Bの目線
  • 第五章『信奉者』では、事件に関与した少年Aの目線
  • 第六章『伝道者』では、再び女性教師目線

淡々と、そして一方的に、読者とその章の語り部の2者だけしか存在していない錯覚に陥り、各々の目線から読者に関係者としての気持ちがダイレクトに投げかけられます。

まるで関係者と文通しているかのようで、異様というか、不気味ささえ感じます。

各々が、娘を亡くした母として、教え子として、犯人の母として、利用された犯人として、利用した犯人として、そして被害者として、まるで感情を感じない文書で、それでも感情的に語りかけてきます。

元少年Aによる『絶歌』を思い出す

かの「神戸連続児童殺傷事件」を起こした「酒鬼薔薇聖斗事件」こと少年Aが出所し、元少年Aとして太田出版に持ち込んだ手記が『絶歌』として出版され、最近話題になっている事をふと思い出します。

なるべく本とは中立な立場を好む私ですが、手に入れたい気持ちもありながら、それでも犯罪者に1銭でも印税が入るような消費はしたくないのも、また本音です。

結局、まだ手に入れていない(手に入れようか迷っている)ので、正直なところ内容は全く分かりません。とても気になるのですが、人が書いた書評を読むことすら憚られます。

本作品『告白』は、未成年者による殺人罪に対する断罪をテーマとしており、結末には深い闇を感じます。

これで良かったのか、良くなかったのか。断罪は成功だったのか、誰が浮かばれただろうか。これほどまでに深い余韻を残す作品は、今年に入ってからは東野圭吾の『秘密』以来です。

湊かなえの作品は初めてでしたが、他の作品も読みたくなりました。とても気になります。著者の作品で、他におすすめの作品がありましたら、教えてもらえませんか?

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