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一片氷心で四季を巡る書斎ブログ

『暗黒女子』秋吉理香子/花園の女子高を舞台とした1人の少女の死とは

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不気味な装丁。目を合わせると何だか不安になる少女の佇まい。

私は10代の頃に乙一の作品を読み漁っていた読書体験から、本書『暗黒女子』は乙一の『GOTH』が再来したような感覚をずっと肌で感じていました。

しかし、単行本の新刊は高いので敬遠していたのですが、偶然、古書店のワゴンセールで安価で手に入れる事が出来ましたので、早速読んでみました。

私が普段よく訪れる『丸善ラゾーナ川崎店』の書店員のコメントが寄せられていた事も決め手の1つとなりました。

この中にいる。いつみを殺した犯人がーー
今日のテーマは、いつみの死です
ある女子高で、一番美しく一番カリスマ性のある女生徒が死んだ。
その一週間後、親しかった六人が部室で語り出す、彼女の死の真相とは?

誰にでも平等で、絵に描いたような美少女・白石いつみの死

はじまりは、とある名門・聖母女子高等学院で起こった美しい少女・白石いつみの死。

彼女の死を悼むため、執り行われる闇鍋をつつく文学サークル伝統の読書会。

いつみが復活させ、校内では誰もが憧れるアナスイのようなゴシック調の文学サロン。

六人の少女それぞれが、「いつみの死」をテーマにした自作の小説で、いつみとの運命的な出会いと、いつみを殺した犯人について語り始める。

語りべ毎に異なる殺人犯。犯人は一体だれなのか。

いつみを除く、主な登場人物は以下の6人

二谷美礼『居場所』

母子家庭で貧しい家庭の出身。

猛勉強の末、奨学生として聖母女子高等学院へ入学。憧れのいつみに突如気に入られ、文学サークルへ。

小南あかね『マカロナージュ』

一流の日本料亭の娘。

洋食レストラン開業の夢を実家の火事で失い、完璧なキッチンが具備された文学サロンを求めて文学サークルへ。

ディアナ・デチェヴァ『春のバルカン』

ブルガリアからの留学生。

ホームステイでブルガリアへ訪れた、いつみのはからいで日本へ留学。

古賀園子『ラミアーの宴』

医者であった故人である父を目標にしている理系学生。

勉強に明け暮れる日常に味気無さを感じ、いつみに誘われるがまま文学サークルへ。

高岡志夜『天空神の去勢』

在学中に執筆したライトノベルがベストセラーとなった学生作家。

作品の手腕を買われ、文学サークルへ。

澄川小百合『死者の呟き』

文学サークルの会長にして、いつみの親友。

いつみとは異なる美しさを持つ、いつみと共に文学サークルを復活させた立役者。

そして会長・澄川小百合の口から語られる全て

各々が、カリスマ女学生・いつみとの出会い、そのカリスマ性を小説の中で語りながら、事件と「すずらん」を結びつけながら、それぞれが異なる生徒を犯人と語る。

一見すると平等に愛され、尊敬しあっていた、白石いつみと5人と澄川小百合の関係性。しかし、各々が異なる犯人を指名する。一体誰が嘘をついているのか?犯人は一体誰なのか?

6人目の朗読者として、最後のトリを務める澄川小百合。

ところが冒頭から、澄川小百合が持ち寄った小説は意外なものであった。

いくら上質なストーリーであっても、伏線が蜜にはりめぐらされていても、自分のためにそれらが用意されたのでなければつまらない。(211ページ)

聖母のような慈愛に満ち溢れた、聖女・白石いつみの正体とは。そして、誰が彼女を死に追いやったのか。

…そして、闇鍋。

【総合的な感想】ミステリファンなら装丁と作品名に惑わされないでほしい

ゴシカルな少女のイラストと、『暗黒少女』という不気味なタイトル。

どこか、こじらせてしまった厨二的な雰囲気がありますが、ミステリファンならそれらに惑わされること無く、一度は読んでみて欲しい作品です。

文学サークルに所属する、各々の生徒が書いた小説として語られる、いつみとの関係と犯人像は、まるで密室殺人に遭遇する某探偵物漫画のような展開で、どこか懐かしくもあります。

ぼんやり思い浮かべていた乙一の『GOTH』とは全く異なる作品でしたが、左記の作品を好む人であればハマるかもしれません。

そして、ゾッとするような想像を掻き立てる、なかなかダークネスな終わり方です。

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