アイスハート

一片氷心で四季を巡る書斎ブログ

『ちょっと今から仕事やめてくる』北川恵海/仕事が憂鬱になった時に読みたい、社会で生きることの意味を知る小説

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2009年4月、満を持して大学を卒業した私は、とある企業に就職しました。

諸々の事情が有り、急遽就職活動を開始した私にとっては就職活動そのものに非常に苦しみ、それなりに苦労してやっと得られた内定でした。

「これから約40年この企業で働き、いつかは偉くなり、安定した生活を送る事ができるのだろう。」

しかし、そんな甘い考えは研修期間の3ヶ月を過ぎた頃に砕け散りました。今思い返せば、いわゆるパワハラだったと思うのですが、仕事がうまくこなせなかった自分が悪い、と自分で自分を追い込んでいた事が思い出されます。

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『君にさよならを言わない』七月隆文/切なくも温かい涙が頬を伝う、感動の連作短編集

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あまり新刊の本は買わない方ですが、先日、買い物に出かけた際に初めて訪れた本屋さんで時間つぶしをしていた際に目に入ったのが、本書『君にさよならを言わない』です。

僕は明日、昨日の君とデートをする』で期待が寄せられた七月隆文の第2作目です。

前作を読み、今後新刊が発行されたらチェックしようと思っていた矢先の出来事でしたので、数冊の本と共にレジへ直行し、1日で読了しました。

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『原発ホワイトアウト』若杉冽/電力事業にまつわる内情を語る小説形式の告発本

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2011年3月11日。日本に未曾有の危機をもたらした、東日本大震災。

その地震の揺れは、当時私が住んでいた三重県にまで及びました。ゆっくり動く赤べこの様にふらふらと、まるで突然高熱を発した時のような感覚に陥り、天井を見上げるとそれぞれのデスクの内線番号が記されたプレートが大きく揺れていました。

何事だろう、とオフィスに備え付けられたテレビをつけてみると、まるで映画の世界のように津波に飲み込まれる仙台空港の滑走路が目に飛び込みました。

一体何が起きたのだろう。様々な震災を乗り越えた日本ですが「また震災が起きたのか」「でも、また数年後には復興しているだろう」、なんて甘い考えをブラウン管に映し出される映像を見ながらも考えていたことを今でも思い出します。

しかし、悲しくも多くの人が犠牲になるのはこれまでの震災と同様でしたが、一つだけこれまでと異なる点がありました。それが、福島原発事故でした。

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『乳と卵』川上未映子/男には分からない女性の側面を綴る文芸作品

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どちらかというと大衆文芸を好んで読むのですが、古書店をぶらついていた時にふと目に飛び込み買ったのが本書『乳と卵』。

男性作家の作品の方が好きな傾向にありますが、今年に入ってからは女流作家の作品も少なからず手に取るようになりました。

川上未映子といえば、何年か前に芥川賞を受賞した姿をテレビで拝見した際、(失礼ながら)綺麗な作家さんだなぁと思った事が思い出されます。

たまには純文学も意識して読んでみよう、と手に取った次第です。

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『吉祥寺の朝比奈くん』中田永一(乙一)/ちょっぴりホロ苦な青春恋愛短編集

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既に著者である本人も公認している話ですが、中田永一は鬼才の現代作家・乙一の別名義です。

本書を購入したのは、実は今から3年以上前の事です。その頃の私は、プライベートな事情で精神的に参っていて、本の中へ逃げ込みたい思いで手に取った事をよく覚えています。しかし、購入直後は大好きだった小説も全く手に取る事ができず、長らく積ん読になっていました。

今年に入ってから数えきれないほどの本を買い込み、階段が作れる程の未読本が積み上がってしまいましたが、ひょんな事から本書の存在を思い出し、手にとって読み始めました。

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『天使の囀り』貴志祐介/何かに支配される事の恐怖を描くホラー小説

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貴志祐介は私の最も好きな作家のうちの一人で、今年に入ってから『新世界より』に引き続き2作品目として手に取った作品が、本書『天使の囀り』です。

新世界より』は単行本にして3冊に渡る超長編のSF作品でしたが、本書はかつて読んだ『クリムゾンの迷宮』を思い出すホラー作品となっています。あちらは脱出系ホラーゲームのような感覚でしたが、『天使の囀り』はミステリ的な要素が強いホラー小説となっています。

文庫版もありますが、古書店で初版の単行本がありましたので、敢えて単行本を買いました。

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『きみはポラリス』三浦しをん/様々な恋と愛、星が瞬く夜空から自分だけのポラリスを見つけたい。

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仕事とプライベートの変化により、生活のリズムが少々崩れておりました。

読書が進む時は、体調や心理状態が安定している時であり、現に9月は思うように本が読めませんでしたが、少しずつ読書の秋への流れに乗る事ができるようになった様子です。

さて、今年に入ってからよく読むようになった恋愛小説。三浦しをんの作品は前から気になっていたのですが、例に習って何を最初に読めばいいのだろうと悩んでいたのですが、紹介文に書かれていた最強の恋愛小説集という言葉に惹かれ、本書を手に取りました。

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『はじめての文学』宮本輝/二度と戻らない少年・青春時代の思い出

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私が青春を共にしたおすすめの小説ランキング50』でも紹介している『はじめての文学』シリーズ。(そちらでは村上春樹の作品を紹介しました。)

単行本で刊行されているため、文庫本と比較して割合ではありますが、絶妙なサイズ感で小学校の頃に手にした江戸川乱歩の少年探偵団シリーズを思い出します。

さて、このシリーズですが、私は今まで村上春樹のものしか所有しておりませんでしたが、今年に入って宮本輝の『青が散る』を読んだことでいたく感銘を受け、著者の短編集を読んでみたいと言うことで購入しました。

青春の青/情熱の赤、混色である紫という色彩は、なんとなく宮本輝のイメージに合うような気がします。

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『四畳半神話大系』森見登美彦/ボロアパートに住まう若者の畳の並行世界

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気に入った作者を見つけては、その作者の他作品を読み漁ってしまう癖があるため、なるべく多くの作者の本を選ぶことを誓った昨今。

夜は短し、歩けよ乙女』では森見登美彦という小説家から大きな衝撃を受けました。

そして、結局他作品も是非読んでみたいと買ってしまったのが本書『四畳半神話大系』です。

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『ストロボ』真保裕一/活字の写真で振り返る一流カメラマンの過去と未来

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以前勤めていた会社の上司と、おすすめの本や読書について意見交換をする際、ひょんな事から話題になった真保裕一。

元上司曰く、山岳小説が好きだと言うことで、青春を共にした小説ランキングベスト50でも紹介している、真保裕一の『ホワイトアウト』が好きだと言ったところ、私の年代から真保裕一の名前を聞いたことにいたく驚いていた様子でした。

そんなことを思い出しながら、いつものように古書店をぶらぶらとしていた時に目に入ったのが本書『ストロボ』。

最近、カメラと写真撮影に少々凝っている私には何ともドンピシャなタイトルでした。

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