アイスハート

一片氷心で四季を巡る書斎ブログ

『コンビニ人間』村田沙耶香/社会不適合者は不幸なのか?普通であることは幸福なのか?

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私は大学1年の夏休み中と4年生に1年弱ほどコンビニのアルバイト経験がありますが、時給が安い割に多くのサービスを提供しなければならず、土地柄めんどうな客も多かった事もあって、多くの意味で大変なアルバイトです。

また、働く人も多種多様でした。事業が失敗した中年男性、アルバイト生活のまま結婚して子供がいる30代のフリーター、扶養家族の範囲内で生活費を稼ぐパートタイマー、日中は工場で働きつつ夜勤バイトもこなすタフな中国人、経営者になる夢を語る男子高校生。

中でも大学4年生の時にバイトをしていたコンビニの雇われ店長は、昼夜問わずアルバイトの欠員部分を埋め合わせしていたため、不規則な生活と見るからに不健康な食生活から、この人は恐らく早死にするだろう、なんて考えていた事を思い出します。

今当時のアルバイト先を訪れても、大学1年生の夏休みを過ごした複合施設の1階にあったコンビニは建物ごと無くなり、4年生の頃の国道に面したコンビニは当時の知り合いが一人も残っていません。みんなどこへ行ってしまったのでしょう。

しかし、あの狭いコンビニという空間の中へ多くの人が訪れ、その中で働く人も多種多様で、それはまるで異世界のようで、現実世界とは切り離された社会と文化を形成しているかのようでした。

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『旅猫リポート』有川浩/人と猫の関係を超えた絆の旅

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旅をしました。

先日、福島県へ仕事の都合で出張をしたついでに2泊3日(出張も含めると3泊4日)の旅です。

予定の1つとして磐梯熱海の温泉宿にゆっくり泊まって、久しぶりに好きなだけ小説でも読もうかと計画をしていたのですが、うっかり持っていく予定だった小説を忘れてきてしまったため、郡山駅で購入した小説が本作品です。

旅路の途中ということで、どこか旅をテーマにした物語を求めているところがあったのかもしれません。

2泊3日の福島旅行、実際に旅をしながら読んだ旅小説をここに紹介します。

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『夜行』森見登美彦/鞍馬の火祭の夜に消えた彼女と、銅版画にまつわる数奇な物語

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これまでに『四畳半神話大系』、『夜は短し歩けよ乙女』など数作品を読み、すでに森見登美彦の大ファンです。

2016年はなかなか読書に時間を割く事ができず、あまり小説を読むことができませんでしたが、ずっと書店で平積みにされている本作品が気になっていました。

読みたいと思ってからしばらく時間が経ってしまいましたが、年末年始の休暇を生かしてついに読了。結論から言うと、2017年の始まりに読むにふさわしい物語でした。

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『君にさよならを言わない2』七月隆文/待望の切なくて暖かい感動する連作短編集の続編

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続編を所望しつつ書評記事の筆を置いた前作ですが、書店を徘徊していたところ続編が発売されていました。

といっても初版が8月ですので、かれこれこの記事を書いている時点で4ヶ月が経過している事になります。

同時に、前作の書評記事を書いたのが1年以上前のことですので、もうあれから1年経ったのかと思うと感慨深いものがあります。

諸事情あって2016年は、2015年の時ほど読書の時間が確保できませんでしたが、前作でとにかく感動した記憶だけは新しかったため、さっそく購入/読了いたしました。

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『働かないって、ワクワクしない?』/過労に喘ぐ日本人こそ読みたい最強の自己啓発本

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温泉に浸かったいい感じのおっさん風アザラシと、ガッツリ書籍に印刷された「もっとも危険な本」である旨の帯。

いかんせんキャッチーな書籍名ですので、「どうせ煽っておいて、中身は薄っぺらい自己啓発本でしょ」と思い、興味本位で手にしてさらっと読んでみると、良い意味で期待を裏切られた感のある、非常に内容の濃い書籍でした。

どこかでセミナーへのお誘いが出てくるのではないかと、ヒヤヒヤしながら読んでいたのですが、その心配は杞憂に終わり、結論から言うと非常に心を動かされる良書でした。

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iPhoneやiPadからAmazonアプリを起動せずにKindle書籍を買う方法

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もともと本は紙派だった私ですが、電子書籍には以前から興味があり、今年に入って、ついにAmazonが販売する電子書籍リーダー、Kindle Paperwhiteを購入してしまいました。

小説は相変わらず紙の本を読んでいるのですが、漫画やビジネス書、自己啓発本などは今では全て電子書籍で購入しています。

どこでも本がよめるのは素晴らしい事で、本屋に行かなくとも話題の本が自宅で、外出先で読める便利さは体験してみなければ分からないと思います。

しかし、馴染みあるAmazonの公式アプリからは電子書籍のサンプルしかダウンロードできない、という点に躓いてしまいました。色々と試行してみたところ、iPhone単体でもKindle書籍が購入できることが確認できましたので、ここの手順を残したいと思います。

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『旅をする木』星野道夫/時代を超えてアラスカから届く無職透明の手紙

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本書に興味を持ったのは、仕事中に手持ち無沙汰で読んだ、とあるフォトグラファ(写真家)の死を悼む大手メディアのドキュメントからでした。

http://www.asahi.com/articles/ASJ8G5RKQJ8GPTFC00B.html

私は趣味の範囲で写真もやるので、時代が忙しなく流れ去る現代に於いて語られる、(私の)聞いたことがないフォトグラファの名前に思わず引き込まれ、その代表的な著書と聞いた本書を手に取りました。

大自然・アラスカ。その世界やその土地の生活など、私たちの思考を傾けた事があったでしょうか。

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Kindle端末のキャンペーン情報の要否と無料3G回線の必要性について

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Kindle端末を安く購入したい場合、キャンペーン情報表示の有無と、3G回線の要否との組み合わせで、端末購入価格を安く抑える事ができます。

私は先日、キャンペーン情報無し+3G回線のオプションにてKindle Paperwhiteを購入しましたので、Kindle端末購入にかかるオプションの要否について語りたいと思います。

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紙の本が好きな読書家が電子書籍リーダーKindleを手にした理由

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本は紙派を豪語していた私ですが、この度、Amazonが出荷/発売をしている、Kindle端末(具体的には、Kindle Paperwhite)を購入した事をここにご報告致します。

紙媒体にこだわっていた私の心境の変化と、端末購入にかかる諸葛藤について、せっかくなので赤裸々に語りたいと思います。

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『また、同じ夢を見ていた』住野よる/幸せとは何か、もう一度考えよう。

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諸事情あって、ブログの更新も読書の継続もしばらく出来ていませんでした。

そんな私がもう一度読書を再開するきっかけとなったのが、本書『また、同じ夢を見ていた』です。

著者の住野よるの作品は、処女作である『君の膵臓をたべたい』を読んで以来大ファンで、前作が本屋大賞第2位を受賞するなど、次の作品に強い期待を持った読者の方も多いと思います。

本書は前作とは違った切り口で、再びあの暖かさを感じることができました。

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