アイスハート

一片氷心で四季を巡る書斎ブログ

読書/書評-小説

『いなくなれ、群青』河野裕/失くしたモノを見つける青春ミステリ

最近、ライトノベル以上、文芸作品未満の小説をよく読んでいる気がします。 これは、読んだ本をブログで紹介するようになってから感じる読書そのものへの変化の1つです。 以前は、特定のお気に入りの作家の中から気に入った作品を選択していたのですが、多…

『ボーナス・トラック』越谷オサム/死者と社畜の面白可笑しい奇妙な生活

越谷オサムの作品は、これまでに『陽だまりの彼女』、『階段途中のビッグ・ノイズ』と読んできました。 どちらの作品も非常に面白く、越谷オサムという作家を好きになるきっかけとなりました。 本作品『ボーナス・トラック』トラックは、そんな越谷オサムの…

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』七月隆文/本当の意味での運命の出会いと2人の恋愛小説

今月は仕事が多忙で中々思うように本が読めません。 しかし空いた時間を利用して、なるべく本を読もうとしている/読まなければ心が廃れてくる気がしますので、全く小説を手にとっていない訳ではありません。 本作品は、今年のはじめに書いて、今もなお当ブ…

『死神の浮力』伊坂幸太郎/死神・千葉が長編で帰ってきた!

伊坂幸太郎の作品は、他作品の登場人物が再び他作品でも登場する、ということは珍しい事ではありません。 本作品『死神の浮力』は、ベストセラーとなった短編集『死神の精度』に登場した死神・千葉の長編小説です。

『ガーデン・ロスト』紅玉いづき/4人の少女が迎える季節と儚い花園

本作品を知るきっかけとなったのは、Amazonでとある本を探していた時に「この商品を買った人はこんな商品も買っています」のコーナーに掲載されていた事でした。 小説は基本的に古書店で買う事が多いのですが、Amazonで本を探すことは日常茶飯事だったりしま…

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹/色と創作と暴力が溢れる小説

もう何冊目の村上春樹でしょうか。 起承転結を持たない、彼の作品に毎回これほどにまで夢中になるのは、何故だかいまだに分かりません。 文庫化を待ってから読もうと考えていたのですが、古書店を巡っていたら思わぬ安価で購入ができたため、『女のいない男…

『アジアンタムブルー』大崎善生/優しく儚げな愛と命

私は観葉植物が好きで、中でもシダ植物ながらもアジアンタムの葉の儚い美しさには一目置いています。 暇さえあれば近所の古書店に出入りしていて、ハードカバーの装丁の美しさに、思わず手にとってしまったのが本書『アジアンタムブルー』です。

『ビブリア古書堂の事件手帖(5)〜栞子さんと繋がりの時〜』三上延

前作の4巻から5巻(本作品)に至るまで、しばらく他の本を読み間を置きました。 一気に読みたい気持ちも山々なのですが、膨大な積ん読本から、その日の気分でその日に読む本を選んでいるのですが、やっとビブリア古書堂シリーズを手に取る日が来ました。

『タイタス・アンドロニカス』シェイクスピア/特別な悲劇をあなたに。

実はシェイクスピアの作品を読むのは、本作品が初めてです。 当然、著者の名前だけに留まらず、数多く残された不動の作品たちの名前は認識しています。しかし如何せん、作品が多すぎて何から読めば良いのか分かりませんでした。 そんな私の助けになったのが…

『砂漠』伊坂幸太郎/青春の光と闇の中に社会の乾きと奇跡を見出す

ブログのコメント欄で教えていただいて、手に取った本です。 これまでに感じていた、伊坂幸太郎という作家の印象に変化をもたらす作品でした。伊坂幸太郎ファンなら、必読の作品と言えるかもしれません。 仕事の都合で読了までに少々日数がかかってしまいま…

『玩具修理者』小林泰三/生と死の狭間の世界

2つの作品が収録された本書。少々不気味なカバーですが、内容は霊的なホラーではありませんので、表題作の『玩具修理者』と、もう一つの作品『酔歩する男』も、凄惨な表現に多少の耐性があれば問題なく読めます。 本作品は、『私が青春を共にした、おすすめ…

『これはペンです』円城塔/小説の可能性を掘り起こす小説

円城塔というと私の大好きな作家の一人、伊藤計劃の盟友として有名で、『屍者の帝国』で30ページの序文を残してこの世を去った伊藤計劃の意思を継ぎ、作品を完成させた人物という印象です。 『屍者の帝国』に寄せられた円城塔による”あとがき”からも読み取…

『異邦人』アルベール・カミュ/精神病質(サイコパス)の源流

様々な小説の中に頻繁に登場する小説。 随分前から気になっていたのですが、永らく買わずにおりました。そして、今年に入って買ったはいいものの、しばらく積ん読として読まずに側に置いていた作品です。 アルベール・カミュは、あのノーベル文学賞を受賞し…

『夏への扉』ロバート・A・ハインライン/時空を超えたハッピーエンド

ロマンチックでハッピーな気分になれる小説 という爆笑問題の田中裕二(玉なしで小さい方)のコメントが寄せられた帯と、猫の絵と(私は犬派ですが)、夏を感じるこの季節から、タイトルに惹かれて手に取った作品です。 調べてみると猫SFと呼ばれ、長らく…

『眉山』さだまさし/気丈な女性の生き方

さだまさしと言うと、切ない歌を歌う丸眼鏡の歌手というイメージがありますが、著書も多数存在します。 高校時代に司馬遼太郎を愛読していた読書家の友人が、「さだまさしは小説も良い」と言っていたことを、何となく思い出し、仕事で徳島に若干の馴染みがあ…

『秘密』東野圭吾/ひとりの夫・父・男としての苦悩が切ない

つい最近になるまで、東野圭吾というと凄まじいペースで多くの長編を世に送り出す作家で、いったい何から読み始めたら良いのか分かりませんでした。 しかし、東野圭吾という作家に前々から興味があったので、『白夜行』を先日読んだのですが、辞典みたいな膨…

『雪の断章』佐々木丸美/雪のように降り積もる少女の成長の詩

「まごう事なき徹夜本」 というのが、いつも私の訪れる本屋さんの平積みの添えられた殺し文句でした。 新刊かな、と思って手に取った本作品でしたが、1975年に刊行された佐々木丸美の処女作で、作者である佐々木丸美は2005年に突然他界されてしまっ…

『階段途中のビッグ・ノイズ』越谷オサム/爆ぜろ音楽!弾けろ青春!

越谷オサムの『陽だまりの彼女』を読んで、年甲斐もなくボロボロと涙を流してしまいました。 その暖かくて優しい文章が脳裏に焼きつき、1冊で大ファンになってしまい、買ってしまった人生2冊目の越谷オサムです。 かつてバンドを組んだことのある大人にも…

『ビブリア古書堂の事件手帖(4)〜栞子さんと二つの顔〜』三上延

今、夢中になっている『ビブリア古書堂シリーズ』。あっという間に第4 巻です。 古書に主軸を置いて回る世界観。本が好きな人ならば、読んでいてとても満たされた気持ちになると思います。 今回もあっという間に通読していまいました。

『スキュラ&カリュブディス 死の口吻』相沢沙呼/背徳の新伝奇ミステリ

Amazonでとある本を探していたとき、あなたにおすすめの書籍として表示された本書。 まるで少女マンガのような美しい表紙と、どこか惹かれる不思議なタイトル。 今年は、なるべく新しい作者の本を開拓しようと思っていたので、怖いもの見たさで購入してみま…

『ラッシュライフ』伊坂幸太郎/活字の騙し絵と幾何学模様

今年に入ってから2作品目の伊坂幸太郎です。 ちなみに、今年の1作品目は2月に読んだ『短編工場』に含まれていた『太陽のシール』でした。 本作品は、デビュー作『オーデュボンの祈り』の次に世に出た作品で、まだ今ほど伊坂幸太郎の呼び名が有名になる前…

『ビブリア古書堂の事件手帖(3)〜栞子さんと消えない絆〜』三上延

続きが気になり、次の本を読む事が楽しみになる作品です。こういう気分は、高校生時代に夢中になって読んだ、J・K・ローリングの『ハリーポッターシリーズ』以来かもしれません。 1巻、2巻に続いて、3巻を読みました。好きなものは後にとっておく性格な…

『陽だまりの彼女』越谷オサム/夢のような甘い生活と暖かい涙

恋愛小説は好んで読む方ではないのですが、表紙のラフスケッチのような少女が、本屋でとにかく目についたので買ってしまいました。 女性が男性に読んで欲しい本ナンバーワン、とかそんな帯がかかっていたと思うのですが、いざ読み終わってみると、そういう煽…

『ビブリア古書堂の事件手帖(2)〜栞子さんと謎めく日常〜』三上延

前回、ついに読み始めたビブリア古書堂の事件手帖シリーズ。 読み始める前に何冊か買い揃えていましたので、ほとんどタイムラグ無しに本作品に手を伸ばすことができました。 上・中・下巻に分かれている一般的な文芸作品と異なり、続きがまだまだある、とい…

『屍者の帝国』伊藤計劃・円城塔/死者の祈りと生者の傲慢

伊藤計劃が執筆途中に他界、その意思を受け継ぎ円城塔が完成させた本作品。 『ハーモニー』を遺作と捉えるべきか、本作品を遺作と捉えるべきか。 ただ、『虐殺器官』で罪について問い、『ハーモニー』で完璧な福祉社会に疑問符を残し、死を間際に控えた伊藤…

『ビブリア古書堂の事件手帖(1)〜栞子さんと奇妙な客人たち〜』三上延

以前よりずっと気になり、読もう読もうと、ずっと思っていた本作品ですが、ついに読み始める事ができました。 なかなか古本屋さんに行っても見かけないので、何でかなと思っていたら、何てことはない、ただライトノベルのコーナーに置かれていただけでした。…

『白夜行』東野圭吾/俺は、私は、陽の当たる世界を歩きたい

東野圭吾と言えば、本を読まない人でも名前くらいは聞いたことがあると思います。 本屋さんに行けば、彼の作品が平積みにされているのを毎回目にしていることでしょう。 実は、私は東野圭吾の作品を読むのは、この『白夜行』が初めてです。

『新世界より』貴志祐介/1000年後のロストテクノロジーな日本

貴志祐介は、私の好きな作家の一人ですが、実はあまり多くの作品を読んだことはありません。 若いころに、ホラー作品として『十三番目の人格(ペルソナ)ISOLA』、『クリムゾンの迷宮』、切ないミステリ作品『青の炎』を読み、本書『新世界より』は通算4冊…

『ウランバーナの森』奥田英朗/お盆の軽井沢を舞台にした死者たちの宴

先日読了した、『最悪』と同時に購入した本書。 『ウランバーナの森』は、私が学生時代に大好きだった、精神科医伊良部シリーズ(『イン・ザ・プール』、『空中ブランコ』等)の作者である奥田英朗の処女作です。

『ニューロマンサー』ウィリアム・ギブスン/サイバーパンクSFの金字塔

最近、SF小説を好んで読む傾向にあります。 本書『ニューロマンサー』は、SFの中でもサイバーパンクというカテゴリを確立した金字塔であり、ウィリアム・ギブスンの代表作となっております。 サイバーパンクとは平たく言うと、映画ではキアヌ・リーブス…

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